私たちチックは、宮城県仙台市でドローンスクールの運営やドローンの販売を行っている会社です。東北地方を中心に、さまざまなフィールドでのドローンの活用をお手伝いしています。
今回は、これからドローンの活躍が期待されるフィールドの一つとして、「林業」に注目していこうと思います。
日本は国土面積のおよそ3分の2が森林の「森林大国」です。豊かな森林資源をどのように活用し、次代につなげていくかは社会の重要なミッションとなっています。
一方で、林業は長年、国産材価格の下落や担い手の減少など、厳しい状況が続いてきました。
構造的な課題を抱えている林業ですが、地球規模の環境問題への対応や地方創生など、林業の新たな役割にも注目が集まっており、各地でさまざまなアプローチが行われています。
豊かな森と地方の生業を次世代に引き継いでいくために、日本の林業と森林の未来を考えていきましょう!
1.森林大国、日本。
(1) 先進国トップクラスの森林率
日本は「森林大国」と呼ばれています。国内の森林面積は約2,500万haで、国土面積の約67%、およそ3分の2が森林です。このうち、人の手が入っている人工林は約4割を占めています。
国際連合食糧農業機関(FAO)の2015年の報告書によると、日本の森林率は先進国(OECD諸国)の中ではフィンランドに次いで大きく、人工林の面積でも世界第7位です。
日本は一般に資源の乏しい国と言われていますが、実は、世界有数の森林資源とポテンシャルに恵まれた国と言えます。
(2) 森の恵み豊かな東北地方
私たちの拠点とする東北地方は、全国的に見ても森林資源が豊富なエリアで、森林率は約7割です。
青森県と秋田県にまたがる世界自然遺産「白神山地」のブナ林、「日本三大美林」に数えられる青森ヒバ、秋田杉を代表として、各地に広大な天然林、人工林が広がっています。
東北6県のうち、最も広い森林面積を誇るのは岩手県で約117万1千haと、全国でも北海道に次ぐ広さです。次いで福島県の約97万2千ha、チックのある宮城県は約41万7千haとなっています。
2.日本の林業の歩み
(1) 「国の宝は山也」。江戸時代から取り入れられた森林管理。
森林資源に恵まれた日本では、古来より、人々は暮らしの様々な場面に木を利用してきました。
「林業」として植林や間伐などを計画的に行うようになったのは、江戸時代頃からと言われています。
当時は江戸や大坂などの急激な都市化で木材の需要が高まり、行き過ぎた伐採で森林の荒廃が問題化していました。
幕府や各藩は、むやみな伐採を規制するとともに、計画的な造林を進めるようになります。
東北地方でも、秋田藩家老の渋江政光が遺訓で「国の宝は山也」、「山の衰えはすなわち国の衰え也」と記すなど、早くから森林管理の重要性は注目されてきました。
(2) 明治以降は隆盛も、現代に至るまで課題を抱える林業。
明治以降は人口増と経済発展、戦時下の特需などを背景に、林業は発展していきました。
同時に深刻化した森林荒廃への対策も、時代を追うごとに整備されていきます。
しかし、丸太の輸入自由化や山村地域の過疎化などを背景に、国内林業は1960年代頃をピークとして衰退期に入りました。
需要も頭打ちになる中で木材価格も低迷し、担い手不足も深刻化するなど、現代に至るまで構造的な課題を抱えています。
3. 林業の現状
林業産出額
日本の林業は、木材の生産とともに、きのこ等の栽培、薪や炭の生産、山菜等の採取で構成されています。
近年の林業産出額は約5,000億円前後で推移し、このうち木材の生産によるものは約2,700億円です(2020年)。
国産材の価格低下などを背景に長らく減少傾向が続いてきましたが、2013年頃からはわずかながら増加傾向に転じています。
東北地方で林業産出額が最も多いのは岩手県で、2020年は約193億円、このうち木材生産によるものは約131億円です。
宮城県の林業産出額は約86億円、このうち木材生産によるものは約49億円でした。
林業に従事する人々
国内で林業に従事している人の数は、約4万5千人(2015年国勢調査)です。
1985年からの30年間で約8万人が減少し、高齢化も進んでいます。恵まれた森林資源を守り、活用していくための担い手の確保が長年の課題です。
最近では、林業の担い手を育成する取り組みも活発に行われるようになりました。
大都市部からの移住者をはじめ、年間3千人ほどが新たに林業の仕事に就いています。
3.重要性を増す日本の林業
世界的な環境問題に大きな役割
長期的に衰退の傾向にあった日本の林業ですが、近年は、木材の生産だけにとどまらない多面的な役割が見直され、今後さらに重要性を増していくと考えられています。
最も大きなトピックは、世界的な環境問題への関心の高まりです。
地球温暖化などによる気候変動への危機感が増す中、森林が光合成により大気中の二酸化炭素を吸収、一時的に固定する性質(炭素循環)は改めて注目されています。
中でも注目を集めている言葉が、「カーボン・ニュートラル」です。温室効果ガスの排出量について、森林などが吸収する量を差し引いた数値がゼロの状態を意味します。
政府は2020年、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量を2050年までに実質的にゼロにする、脱炭素社会に向けての目標を掲げました。
目標の達成のためには、温室効果ガス排出量の大幅な抑制とともに、植林や森林管理、森林資源のさらなる活用推進などが必要となるため、林業はより大きな役割を担っていくことになります。
改めて注目される森林の多面的機能
気候変動などを背景に、豪雨災害が今後さらに多発することが心配されています。
土石流などの被害を抑制するためには、豊かな森林の多面的機能を改めて見直し、保全することが重要です。
豊かな森林には、降った雨を地中にとどめておく保水機能、地中に張り巡らせた根などによる土壌保全機能があります。
これらの機能を守るためには、各地の森林を荒れさせることなく、適切に管理していくことが必要です。特に既存の林業が衰退してきた地方の山間部では、森林再生の担い手となる人材の確保が急がれる一方、基幹産業の少ない地域での古くて新しい生業(なりわい)の場として、「地方創生」の観点から期待する声も高まっています。
今後ますます重要な役割を担っていくことになる日本の林業ですが、依然として多くの課題を抱えている状況には変わりありません。
日本の林業と豊かな森林の持続可能な未来のために、さまざまなアプローチからの模索が続いています。
次回以降は、日本と東北の森林、林業を巡る最新の動向や各地の先進的な取り組み、そしてドローンの活用事例や可能性などについて、取り上げていきます。
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