福島ロボットテストフィールドとは?-各施設の内容と最新情報を紹介

福島にはドローンをはじめとしたロボットの研究・開発拠点となる大規模施設「福島ロボットテストフィールド」があります。

2018年度より順次開所され、すでに多くの企業や団体が利用しています。

ここでは各施設を詳しくご紹介しますので、気になっている方はぜひ参考にしてください。

1.福島ロボットテストフィールドとは?

福島ロボットテストフィールド

福島ロボットテストフィールドは、福島イノベーション・コースト構想に基づいて整備された、大規模なロボット研究開発拠点です。

福島復興をけん引するエンジンとして、世界トップレベルのロボット実験環境の提供や、ロボットにかかわる人材育成、研究開発、運用者の交流促進、ロボットの安全性確保や社会実装のための貢献等を行動指針としています。

この施設で研究・開発の対象となるのは、物流やインフラ点検、大規模災害等で活躍が見込まれる陸・海・空のロボット「ドローン(無人航空機)」「災害対応ロボット」「水中探査ロボット」等。

実際の現場さながらの環境を拠点内に再現することで、実証実験をしつつ研究開発、操作訓練、性能評価を行うことができます。

こういった施設は世界的にも類を見ないだけに、大変貴重な施設です。

2021年度には試験用プラントと試験用トンネルでワールド・ロボット・サミット2020「インフラ・災害対応カテゴリー競技」の開催も予定されています。

2.施設の重要性と期待度

ドローンなどのロボットがインフラや災害時等の最前線で活躍するためには、開発のための拠点が欠かせません。

しかしなかなかないのが現状で、小規模の自社敷地を利用したり実際の現場を使ったり、従来よりある別の大型施設を利用したりして開発や研究を行っている企業や団体がほとんどです。

ですが福島ロボットテストフィールドができたことで、大規模な専用研究拠点が都心からアクセスしやすい場所に確保できました。

他の研究・開発目的で訪れている人たちとの、意見交換の場としても使えることでしょう。

一定期間このエリアを拠点とする研究者や開発者も増えるでしょうから、ロボット業界はもちろん地元地域の活性化にもつながるだけに、今後も期待される重要拠点といえそうです。

3.福島ロボットテストフィールド拠点概要

ドローンテスト

南相馬市の施設がメーンとなり、浪江町に滑走路があります。

福島ロボットテストフィールド

  • 名称 福島ロボットテストフィールド
  • 住所 福島県南相馬市原町区萱浜字新赤沼83番 南相馬市復興工業団地内
  • 電話 0244-26-3431
  • 敷地規模 南相馬市・復興工業団地内に東西約1,000m、南北約500m

アクセス
東京から車で約3時間(常磐自動車道→南相馬IC県道12号経由)
福島から車で約90分(国道115号 相馬福島道路経由or県道12号経由)
仙台から車で約70分(仙台東部道路常盤自動車道→南相馬IC県道12号経由)
そのほか新幹線、電車、バスで原ノ町駅に行くルートもあります。

福島ロボットテストフィールド浪江町滑走路

名称 福島ロボットテストフィールド浪江町滑走路
住所 福島県双葉郡浪江町大字棚塩字東赤坂89番 浪江町棚塩産業団地内

福島ロボットテストフィールドから浪江滑走路までは15km(車で約25分)です。

施設利用には料金がかかります。
使用する施設と時間帯(午前、午後、夜間)によって金額が変わってきますので、詳しくは公式サイの使用料欄を参照してください。

4.エリア紹介

4-1「無人航空機エリア」

無人航空機用として、国内最大の飛行空域と滑走路、緩衝ネット付飛行場を完備。
基本飛行から特殊飛行(衝突回避、不時着、落下、物件投下等)まで可能な環境となっています。
滑走路と直結する格納庫もあり。
ヘリポートはシングルロータ・VTOL型の試験・訓練が可能であり、有人ヘリ離着陸に使用できます。

滑走路は南相馬と浪江の2カ所。それぞれ格納庫があります。
浪江滑走路は東西方向のため離陸後すぐに海上に出られます。

①南相馬滑走路

アスファルト舗装滑走路 500メートル×20メートル(南北方向)
緩衝地帯 幅200メートル(滑走路含む)
滑走路付近に電源とLAN接続口あり

②南相馬滑走路附属格納庫

延床面積 約558㎡S造2階建て
内部設備 計測室、簡易整備室、格納庫、吊りハンガー扉、アンテナ設置台(屋上)、トイレ

③ヘリポート

コンクリート舗装離着陸帯 25メートル×20メートル
芝地駐機場 25メートル×23メートル
コンクリートブロック造燃料庫 12メートル×6メートル×1.2メートル

④浪江滑走路

アスファルト舗装滑走路 400メートル×20メートル(東西方向)
緩衝地帯 幅100メートル(滑走路を含む)
滑走路付近に電源とLAN接続口あり

⑤浪江滑走路附属格納庫

②南相馬滑走路附属格納庫と同仕様

南相馬市と浪江町間の約13キロメートルの区域では、陸上海上で飛行コースを設定して長距離・広域の飛行が可能です。

通信塔は両拠点にあり、通信の確保や低空の風向風速の計測、有人機や鳥などの物体検知ができます。

⑥通信塔・広域飛行区域

高さ 30メートル
設備 気象観測装置(風向風速、温湿度)、広域通信アンテナ(持込可)、空域監視装置(設備の詳細は公式サイト(https://www.fipo.or.jp/robot/facility/aerial_vehicle)でご確認ください。)

緩衝ネット付飛行場は上面と周囲をネットで囲っており風雨・日照のある野外環境下でドローン等の訓練・試験ができます。
航空法適用外飛行場なので法律上の事前申請なしで利用可能です。

⑦緩衝ネット付飛行場

150メートル×80メートル×有効高さ15メートル
人工芝(ロングパイル)
照明、電源、LAN接続口対応
ネットには高強力・高耐候ポリオレフィン使用

⑧風洞棟

平屋屋内実験施設の風洞棟は、無人航空機の空力特性、積載性能、飛行性能、突風・脈動風の安定性を試験できます。

⑨連続稼働耐久試験棟

コンクリートに覆われた試験スペース。長時間連続稼働耐久試験ができます。

4-2「インフラ点検・災害対応エリア」

国内唯一のロボット向けインフラ点検と災害対応実験施設です。
トンネルや橋梁、プラント、市街地、道路はもちろん、想定されるほぼ全ての災害環境、老朽化状況を再現できます。

①試験用橋梁

状況確認や点検の操縦訓練ができます。コンクリートのひび割れや剥離、うき、鋼材のボルト緩み、亀裂、照明柱、防護柵等を再現。トラスやケーブル管も設置可能です。

5G基地局(株)NTTドコモ
橋梁 長さ50メートル道路幅10メートル 桁下高5メートル
模擬附属物 照明柱、トラス、落橋防止装置、検査路、添架管
その他付属物 たわみ性防護柵、剛性防護柵、屋外コンセント盤
点検対象物 ひび割れ、剥離、うき、ボルト緩み、亀裂

②試験用トンネル

トンネル内でのトラブルを想定し、状況確認や捜索、瓦礫除去、点検等の各種訓練や試験が行えます。交通事故や崩落、壁面のひび割れや浮き等老朽化の再現のほか、高速道路・一般道備え付け照明、ジェットファンも設置。障害物(車両、瓦礫、岩石、土砂等)を設置したり、両側シャッターを閉鎖したりすることで長大トンネル再現も可能です。

長さ 50メートル
幅 6メートル(丸形トンネル)

附属物 LED灯、ナトリウム灯、模擬ジェットファン、模擬消火栓、送水口、誘導表示板、排水側溝、コンセント盤

点検対象物 コンクリートひび割れ、うき、巻厚不足

③試験用プラント

6階建ての試験用プラントでは平時、災害時のプラントを再現して試験や訓練ができます。いろいろな形の配管、バルブやダクト、階段、垂直梯子、煙突等を設置。計器、煙、熱源等を配置することで異常環境を再現可能です。

5G基地局(株)NTTドコモ
各フロア約130㎡ 高さ30メートル S造6階建て
貨物用エレベーター有

④市街地フィールド

住宅とビル、信号と標識付交差点で市街地を再現。建物内外に車両や瓦礫、障害物を設置して調査、救助、捜索、点検訓練等が可能です。道路部分で自動走行試験もできます。

5G基地局(株)NTTドコモ設置

ビル1棟 RC造3階建
住宅2棟 木造二階建て 内部も再現
ガレージ1 ビル型S造
ガレージ2,3 住宅型S造
ガレージ4 軽量鉄骨造
※ガレージはいずれも倉庫として利用可能

道路(歩道含む)
南北 長さ75メートル×幅12メートル
東西 長さ96メートル×幅7.5メートル
※電柱、標識、道路照明、信号機等あり

瓦礫
コンクリート瓦礫、コンクリートカルバート、ブリーチングパネル、木瓦礫

⑤瓦礫・土砂崩落フィールド

災害現場を再現し、無人化施工重機やロボットの捜索・救助・復旧・状況確認等訓練・試験を行えます。障害物を自由に設置可能で2パターンの土砂傾斜、軟弱さをかえられる泥濘地、走行耐久テストができる周回路があります。

周回路(アスファルト舗装) 延長400メートル
泥濘地 深さ300ミリメートル
土砂傾斜 傾斜30度、15度
道路陥没・道路亀裂(アスファルト舗装)
瓦礫(アスファルト舗装) 延長20メートル ブロック、車両、電柱
土砂・倒木(コンクリート舗装) 延長30メートル 土砂、岩石、倒木

4-3「水中・水上ロボットエリア」

国内唯一の水中向けロボット用(水中ドローン等)試験場で、ダムや河川でのインフラ点検をはじめ、水没市街地や港湾等で発生する、災害対応のための実証実験が可能です。

①水没市街地フィールド

冠水した建物を設置し、水上・水中ロボット、ドローン等での情報収集や救助・捜索訓練が可能です。障害物を沈めたり、有人ヘリやボートの訓練もできます。

屋外水槽 50メートル×19メートル
水深 0.7メートル(一部5メートル)
水没住宅2棟 一階部分一部冠水、一階部分全部冠水
屋外コンセント盤あり

②屋内水槽試験棟

ダム・河川・港湾等を再現。水中・水中ドローン等の各種訓練・試験ができます。

延床面積 1,456㎡・S造平屋

大水槽
30メートル×12メートル×水深7メートル
水流発生装置、明度調節可能、可動観測架台、クレーン、水中構造物設置テーブル

小水槽
5メートル×3メートル×水深1.7メートル
濁度調節、可動観測架台、水流発生装置

4-4「開発基盤エリア」

①研究棟
福島ロボットテストフィールドの本館。研究者用の活動拠点でもあり、事務所や会議室、展示場等利用も可能。
多数の研究設備等が用意され、風、雨、霧、水圧、温湿度、防塵、防水、振動、電波の計測や試験ができます。福島県ハイテクプラザ南相馬技術支援センターによる技術相談や開発支援を受けることもできます。

建築面積 約5,200㎡
延床面積 約7,600㎡
RC造2階建
駐車場165台

②試験準備棟
③屋外試験準備場
④簡易計測室A,B

5.福島ロボットテストフィールドでできること

施設は大きく分けて3つ(使用、入居、見学)の利用方法があります。

1.施設使用

研究、実験、試験、イベント等、使用する施設に応じて料金を払い利用できます。公式サイトには使用事例の項目もあり参考になります。個人使用もOKデス。

なかには、リアルなシチュエーションを利用しての撮影会といった、ロボットには直接関係がない場合もみられます。これに関してはよくある質問のカテゴリに「研究開発以外の使用目的でも問題ない」と書いてありますので、様々な活用方法がありそうです。

2.施設入居

短期~長期の活動拠点を構える研究者や開発者向けの研究室です。場所は本館研究棟。20前後の法人等が入居しており、空きが出た場合に入居者募集がかかります。

希望する場合は募集のタイミングを逃さないようにしましょう。

3.施設見学 ※新型コロナウイルス感染予防により現在一部見合わせ中

人事育成や今後のロボット産業発展のための一般見学コースです。自治体や関係団体、小中高生等が対象になります。(施設使用希望者の見学は別途相談)

説明や動画鑑賞、質疑応答、研究棟見学とで計30分程度。手続きページから申し込みできます。

6.福島ロボットテストフィールドへ行ってきました

われわれが初めて福島ロボットテストフィールドに伺ったのは施設が開所する前なので、数年前になります。

その時は担当者様と施設有効活用について意見交換をしたのですが、当時はまだ施設がほとんどできていなかったのを覚えています。

今では福島イノベーション・コースト構想にふさわしい設備がそろった大規模研究施設になっていますので、興味を持たれた方はぜひ見学、使用等検討のうえ足を運んでみてください。株式会社チックのある仙台からはもちろん、東京方面からのアクセスにも優れています!

特に弊社が気になっているのは「水中・水上ロボットエリア」。水中ロボット向けの施設は全国的にもほぼなく、通常のプール等と違い専用設備がそろっていますので、水中ドローン業界の発展に欠かせない重要な拠点となりそうです。

また訪問する機会があれば改めてレポートいたします。

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