先日、銚子(ちょうし)にて行われたマリンレスキューチャレンジ2018に参加してきました。
結果は課題2「救難」で見事優勝!
今回はそのコンテストの様子と結果をレポートいたします。
「CMRC2018」大会詳細
まず今回参加した大会の日程や詳細です。
Choshi Marine Rescue Challenge2018(CMRC) | |
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開催日程 | 2018年8月9日(木)~11日(土) |
開催場所 | 銚子沖漁港 |
ミッション | 銚子マリーナ沖で海難事故が発生。人命救助に挑む |
シナリオ | 緊急無線に連絡。沖に出ている漁船から乗組員が一人、船から転落したらしい。落下のタイミングはわからなく、おそらく漁で停泊した近辺であるとのこと。至急落下者の位置特定と、救命道具の投下を行う |
賞金 | 課題1:発見(位置情報および写真の取得) 賞金10万円 課題2:救難(レスキューキットを運ぶ) 賞金50万円 特別賞:5万円 |
目的 | 地域活性化およびドローン関連の発展と人命救助 |
本格的なドローンの海難救助コンテストとしては国内初ではないでしょうか。
コンテスト内容としては以前参加経験のある、北海道上士幌町で行われている山岳救助コンテスト「ジャパンイノベーションチャレンジ」に似ています。
舞台が山か海かの違いで、課題はほぼ同じです。
今回はその時の経験もいかせると考え、参戦してきました。
参加チームは全部で6つです。
今回のCMRCはチーム「東西ドローン」として参加しました。
ちなみに登録する無人機は何台でもOKですが、同時に飛行できるのは1台までです。
また、最終日の11日はYouTubeで城西国際大学マルチメディア学部の学生さんたちによってコンテスト状況がライブ中継されました。
悪天候により1日だけの開催に
今回3日間開催予定でしたが、天候の悪化により最終日の1日だけ行われました。
3日間あることで先の2日間の経験をいかした作戦もねられたかもしれません。
実際に予想外の事態もいくつかあり(詳しくは以下本文にて)、その時の判断は過去の経験がいきたと思います。
なおコンテストは1日だけでしたが、9日にはCMRC開催記念シンポジウムとして「災害救助の課題とドローンがもたらす可能性」をテーマに、講演会とパネルディスカッションが行われました。
開催自体が天候に影響することから、開催期間を数日もうけることはいいことかと思います。
課題1「発見」結果
遭難者に見立てたマネキンが、実施会場1k㎡内のいずれかの場所に設置されています。
タイムリミットは30分です。
ドローン離陸時点から探索エリアまでが約1.5km。そこから1k㎡内ですのでそこそこ距離はあります。
伝送面での問題は海面の反射、映像の乱れ(モザイク状になったり、映像がとびとびになったり)などがありました。
われわれ東西ドローンチームは、残念ながら発見ならず。
優勝は「DJI 認定ストア新宿 / Y.D.S. pro shop」さんで、タイムは7分39秒78。かなり早いかと思います。
そのデータをデジタル化するというのが、ドローンを使う最大のメリットです。
「発見」は「救命道具投下」に比べるとチャレンジしやすい課題であり、全チームが挑戦していました。
見落としさえなければどういった経路で探すかで発見できるタイミングが異なります。
こればかりはその時次第かもしれませんが、われわれは別のコンテスト時もそうですがなかなかうまくいっておりません。
早期発見に向けどうすべきか、今後の課題となりそうです。
実際にドローンで海難遭難者を探すとなると周りはすべて海であり、リアルタイムで発見できるエリアであれば山岳救助よりは見つけやすいかもしれません。
ただ、風が強ければ流されている可能性もあり、遭難の状況を考えれば海難時のほうが緊急を要します。
そういう意味でもドローンは海難救助でかなり活躍できるのではないでしょうか。
課題2「救命道具投下」結果
ライフジャケットもしくは、参加者が用意する救命道具(人がつかまって浮いていられるもの)を目標地点に投下します。
タイムリミットは課題1と同じく30分。
目標地点は2.4キロメートル先と、かなりの高距離となりました。
今回は目標地点に木枠が用意され、そこに投下しました。
われわれ優勝時のタイムは8分39秒。
作戦としては、ジャパンイノベーションチャレンジの経験をいかし、ウインチでおろす作戦となりました。
物資投下時の伝送映像はこちら。
物資をどう投下するか
課題名に「投下」と書かれていることもあり、物資をどうやって「落とす」かを真っ先に考えがちです。
ただ落下時の物資の破損、目標地点とのずれおよび遭難者への接触等の課題克服がなかなか難しいのが現状ではないでしょうか。
ロープ等でつり下げて運ぶ方法もありますが、目的地までに風の影響や障害物への衝突(山岳等では特に)の不安があり、ドローンの飛行自体に危険が及ぶ可能性もあります。
一方で「おろす」作戦は、ウインチの重量や操作等を考えなければいけませんが、風や落下によるトラブルは最小限におさえられます。
ただ、実際の救難状況によってどの方法が最善かは異なるのではないでしょうか。
特に今回は落下物の重量が約400gと軽量でした。
(ジャパンイノベーションチャレンジでは3kg)
物資内容と海という舞台を考えると、落下時の衝撃はかなり少なくなりそうです。
また遭難者が波の影響で特定位置にとどまるのではないと想定すれば、実際に確実に遭難者が物資を手にした時点で切り離す方が確実なので、つり下げも有効かと思われます。
ここは各チームで今後もいろいろな案が出そうですので、期待したいところです。
目標地点の発見
事前に主催者側からターゲットとなる木枠の位置が大まかに知らされており、そのすぐ近くに船がいました。
ただ、浮いている木枠が見づらく、どこにあるのかわからずに苦戦を強いられるチームが多かったようです。
発見1の時同様、マネキン+ライフジャケットのような視覚的に見つけやすいものが目標地点のほうが良かったかもしれません。
船がいたのが幸いでした。
物資を積むことで飛行時間は限られるうえに、目標まで2.4kmありますから、こちらも課題1同様に経験をいかした素早い動きが必要となりました。
映像の乱れを防ぐ方法
映像の乱れをカバーするため、障害物を避けて送信機を高い位置にする必要がありました。
海ですので障害物は少ないですが、木や人(操縦者を含む)、フェンスなどわずかなものが障害になります。
そしてこれらは操縦者がちょっとだけ高い位置に立つことでかなり改善できます。
今回はその場ですぐ用意できるものとして、石の上に機材ケースを置いてその上に操縦者が立つ作戦をとりました。
(むしろ操縦者の足場がしっかりしていないと転げ落ちて、操縦どころではないので要注意です。)
この点は経験がいき、良い結果が出せました。
コンテストを終えて
スピードが求められる海難救助
最終日は天候も穏やかで、風の影響が少なかったのは幸いです。
実際に海難救助にドローンが活躍するとなれば、風の影響は相当なものではないでしょうか。
目標が遠くまで流されてしまえば、捜索も困難になります。
まさに迅速な捜索活動が求められるのではないかと感じました。
経験をつんだ人か、コンピューターか
今回特別賞は、すべて全自動で行っていたことが評価された「Team ArduPilot Japan (TAP-J)」さん。
現状全自動のチームは少ないですが、いずれ精度があがれば、それが主流になるのではないでしょうか。
速さと正確さが求められる遭難救助ですから、操縦者にかかる責任も大きなものになります。
操縦者の立場からすれば「コンピューターをも超えたい」という気持ちがありますが……
今後期待したいポイント
ドローンコンテストのライブ中継
こういったコンテストの開催自体まだ国内では少ないですが、今回ライブ中継があったのが非常に面白い試みだと感じました。
ドローンの飛行が主ですから絵的にはかなり地味なのですが、実際に目視できないものを見られるので、観覧席ではわかりづらい状況も中継で確認できました。
編集することでドローンに詳しくない一般の方でも楽しめる映像にも仕上がるかと思いますので、ぜひ今後もこういった試みに期待したいところです。
参加チームの増加
今回参加資格があったのが「学生」「企業」「複数企業による合同チーム」でした。
ドローンへの関心は年々高まっていますので、今後こういった大会の参加チームはどんどんと増えていくのではないかと思います。
特に期待したいのが学生チームの参加です。
企業では思いつかないような、学生ならではの柔軟な発想が、ドローン業界の大きな発展につながりそうです。
難易度の調整
参加者にはわれわれも含め、ジャパンイノベーションチャレンジを経験しているベテランチームも見られました。
開催地のアクセスの良さや難易度からすればこちらの方が参加しやすいかと思いますので、ぜひ難易度を調整してたくさんのチームが参加できるようになればいいなと思います。
比較的初心者向けの課題を用意したり、ベテランチーム向け課題はどんどん難しくしていただいたり、今年のジャパンイノベーションチャレンジの内容次第で夜間開催もありではないでしょうか。
今回のレポートを書くにあたり、CMRCオフィシャルサイト様(http://cmrc.jp/)、ピーエイチ・プラス株式会社(http://ph-plus.co.jp/kainan2018.html)様の記事を参考にさせていただきました。
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