ドローンに搭載できる小型のマルチスペクトルカメラ。
育成管理、精密農業、スマート農業などのキーワードのよく登場するカメラですが、実は農業以外にも用途を広げているようです。
そもそも、空の上から通常人の目では見ることのできない情報を可視化できる機器ですので、アイディア次第では様々な用途に使える可能性があります。
それらを模索している企業は多いのではないでしょうか?
弊社では、旧型のParrot SequoiaとPix4、Metashapeを使い撮影やデータ解析をしています。
最近は、もっと良い機器が出ていますので、ドローンに搭載されるマルチスペクトルカメラという事で、3商品をピックアップしご紹介します。
ご紹介するマルチスペクトルカメラ
マルチスペクトル搭載ドローンP4MULTISPECTRAL
マルチスペクトルカメラは従来よりあるドローンに取り付けるかたちで利用するのが一般的ですが、DJI社からマルチスペクトル画像システム搭載のドローン「P4 MULTISPECTRAL」(P4M)が登場しました。
P4 MULTISPECTRAL(P4M)とは?
「PHANTOM4 pro」をベースに作られた機体で、カメラ部分がマルチスペクトルカメラとなり、全体がリモート農業用に構築されています。
それ専用というだけあって、マルチスペクトラルセンサーとして申し分のないハイスペック仕様です。
特徴1「農業を可視化し、スピーディーに作物状態を把握」
P4Mは作物の健康状態の把握と植生管理データの取得を一括して行います。
さらにDJIの代表的なモデルと同等の性能基準を基礎とし、精密農業に特化した性能を持ち合わせています。
最大飛行時間27分、最大伝送距離は日本国内で5kmです。
特徴2「画像収集が簡単かつ効率的」
安定化映像システムを内蔵し、すぐ使用できるデータセットを収集。
わかりやすくて効率の良い農業用画像収集ができます。
特徴3「精度を高める日照センサーが付属」
ドローン上部についているスペクトル日照センサーで太陽放射照度をとらえ、時間別でのデータ収集精度を向上させます。
これを後処理したデータと組み合わせることで、精度の高いNDVI(正規化差植生指数)測定結果を生成できます。
特徴4「注意箇所をすぐに視覚化」
予備のNDVI分析とRGBライブ映像を切り替えることで、注意すべき箇所をすぐに目に見えるよう表示できます。
素早く的確な処置が可能です。
特徴5「cmレベルの正確なデータ収集」
DJIのTimeSyncシステムにより、6台のカメラすべてで撮影された画像からリアルタイムで測位データを取得。
RTKを使う事によりcmレベルの測定値が得られます。
いずれのカメラにも半径、接線のレンズゆがみを計測するキャリブレーションがおこなわれ、集められたゆがみパラメーターはメタデータとして保存。
のちのソフトウエアによる作業ですべてのユーザーが調整できる仕様となっています。
P4M活用例
- 精密農業
人間の目では確認できないデータ収集ができ、実用性が高いです。
作物の処理、コスト削減、収穫量の増加、リソース節約などが期待できます。 - モニタリングと調査
作物などの調査とメンテナンスが効率よくできます。
森林の状態、海岸線のマッピング、バイオマスの測定、生態系の管理、水辺の植生の管理などが期待できます。
P4 Multispectralスペック
センサー | 6台の2.9インチCMOS / 有効画素数 2.08MP |
フィルター | ブルー、グリーン、レッド、レッドエッジ、近赤外線 |
最大静止画サイズ | 1600×1300 |
センサー解像度 | 1280×960 |
RedEdge-MX
マルチスペクトルカメラも複数ありますが、Micasense社のRedEdge(レッドエッジ)はその中でも高性能として知られ、リモートセンシング向きとなっています。
ここではRedEdge-MXについてご紹介します。
RedEdge-MXとは?
2017年に従来型より小型化され、あらゆる小型無人航空機(ドローン)への取り付けが可能となったRedEdge-Mが発表されました。
RedEdge-MXになることで性能はさらに洗練されています。
特徴1「精密農業に最適なカメラ性能」
グローバルシャッターで低高度を高速で飛行してもゆがみのない画像保存が可能。
スペクトル帯域は青、緑、赤、レッドエッジ、近赤外線の5波長で、上空120mから8cm/pixelで撮影できます。
特徴2「光センサーとしてDLS2が付属」
リモートセンシングに欠かせないGPS統合型の「DLS2」が付属し、植生指数、RGB出力に対応しています。
「DLS2」とは高性能な照射度キャリブレーション機能のことで、照射強度と太陽の角度を測定し、精度の高いデータを提供します。
放射測定精度を大幅に向上させ、処理時間を大幅に軽減してくれます。
特徴3「小型で頑丈のアルミニウムボディ」
従来のコンパクトさに加え、RedEdge-MXから高い温度にも耐えられるアルミニウムボディに変更されました。
稼働部品もなく丈夫さにも優れています。
RedEdge-MX活用例
- 環境による品種ごとの反応をとらえ、植物と土壌の改善に役立てる
- 異なるスペクトルバンドで、時間経過別の植物ストレスをチェック
- カラーコンポジットにより、水の浸透具合を判別
- 栄養の偏り、季節ごとの肥料の影響の監視
- 植物の病害をいち早く識別し、広がりを防ぐ
- 雑草の識別
- 写真に追加されるデータ(ジオタグ)で優れた作物を見分ける
- デジタル表面モデル(DSM)を作成
- レッドエッジバンドの反射率を測定しかんがい漏れを検出
RedEdge-MXスペック
スペクトル特性 | 青、緑、赤、レッドエッジ、近赤外線 |
サイズ | 87×59×45.4㎜(カメラ本体) |
重量 | 231.9g |
RGB出力 | 3.6MP(全てのバンド対応のグローバルシャッター) |
センサー解像度 | 1280×960 |
Sequoia+(セコイアプラス)
弊社でも利用している農業用マルチスペクトルカメラSequoia(セコイア)がこのたびバージョンアップし、Sequoia+(セコイアプラス)となりました。
ここではマルチスペクトルカメラとSequoia+の基本情報と、進化した性能についてご紹介します。
Sequoia+(セコイアプラス)になってかわったことは?
バージョンアップして大きく変わったのが、Pix4Dソフトウエアを使用する際には反射板を必要とせずに絶対反射率を提供できるようになったことです。
これは商用マルチスペクトルカメラでは初です。
特徴1「正確なカメラ機能」
一回のシャッター操作で4波長のカメラとRGBカメラのシャッターを切ることができ、正確な画像の取得が可能です。
WiFiとPTP、USBに対応し素早いアクセスが可能。
内部ストレージは10フライト分(64GB)の録画容量を確保しています。
レンズプロテクターは耐久性素材を使用。
ドローン非依存機能を持ち、カメラ重量は72g。
コンパクトかつ軽量で小型ドローンの搭載に最適です。
特徴2「日光センサーと自己キャリブレーション機能」
Sequioa+は付属として日光センサーがついています。
本体で使用しているものと同じフィルターを用いた4つのスペクトラルセンサーで、その名の通り日光の状態をログに残す機能を持っています。
さらに自動でカメラ出力の自動キャリブレーション(基準調整)を行うことが可能です。
ドローンの位置を把握する「GPS」とドローンの傾きを観測する慣性計測装置「IMU」を備え、高精度で最適なマッピングも可能です。
追加ストレージとしてSDカードに対応。
重量は35gと本体の半分ほどです。
特徴3「あらゆるドローンに対応した小型カメラ」
Sequoia+は回転翼、固定翼どちらのドローンにも簡単に接続できます。
ドローン上のmicro-USBから電力供給できるのでバッテリーは不要。
さらに日光センサーも柔軟に位置の調整が可能なので、Sequoia+が一台あれば農業的用途に応じて取り付け機体をかえて作業が可能です。
参考)農地に合わせた、ドローンの性能の違い
固定翼:広域タイプ(地域全体、広範囲向き)
- 飛行高度 70m~152m
- 飛行時間 長時間
- 風圧抵抗 高い
回転翼:狭域タイプ(特定範囲、局地的向き)
- 飛行高度 9m~152m
- 飛行時間 短時間
- 風圧抵抗 低い
Sequoia+活用例
- 植生指数を使用し、作物の栄養不足状態を可視化
- 作物の生育状況、病害の広がり、ストレス、治療の効果をチェック
- 播種後の進捗状況の確認
- 水分補給が必要な場所の特定
- 肥料散布方法を最適化して生産性を向上
- 灌漑の状況、浸食しやすいなどの分析
Sequioia+スペック
バンド数 | 4バンド+RGB |
スペクトル特性 | 緑、赤、レッドエッジ、近赤外線、RGB(可視光) |
サイズ | 59×41×28㎜ |
重量 | 72g |
データ保存 | 64GB内部ストレージ |
光センサー | 対応 |
ATLASクラウドサービス | 使用可能 |
USB | 対応 |
IMU | 対応 |
日光センサー | |
---|---|
サイズ | 47×39.6×18.5㎜ |
重量 | 35g |
GPS | 対応 |
SDカード | 対応 |
IMU | 対応 |
磁器計 | 対応 |
カメラ部分 | |
RGBセンサー | ・焦点距離 4.9mm ・イメージ解像度 4608×3456 ・イメージサイズ 6.2mm×4.6mm |
マルチスペクトルセンサー | ・焦点距離 4.0mm ・イメージ解像度 1280×960 ・イメージサイズ 4.8mm×3.6mm |
マルチスペクトルカメラ比較
P4MULTISPECTRAL | RedEdge-MX | Sequoia+ | |
メーカー | DJI | MICASENSE | Parrot |
スペクトルバンド | 青、緑、赤、レッドエッジ、近赤外線 | 青、緑、赤、レッドエッジ、近赤外線 | 緑、赤、レッドエッジ、近赤外線、RGB(可視光) |
センサーの解像度 | 1280 x 960 | 1280 x 960 | 1280 x 960 |
視野 | 62.7° | 47.2°HFOV | 63,9°HFOV |
URL | https://www.dji.com/jp/p4-multispectral/ | https://micasense.com/rededge-mx/ | https://www.cybernetech.co.jp/product/flycyber_sequoia.html |
どの機種が一番良いのはという比較は難しいところでありますが、これからマルチスペクトルカメラの導入をお考えであれば、P4MULTISPECTRALが良いのかと思います。安定したドローンに搭載されていますので、飛行性能としては心配不要でしょう。
精度を追求するのであればRedEdge、ドローンは持っているからとりあえずマルチスペクトルカメラという方はSequoia+の選択が無難ですかね。この分野は正解がわかりませんw
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